この記事を書いた人
鈴木 健太郎
弁護士(交通事故事案専門)
交通事故を専門に扱う弁護士。特に、物損事故や報告義務違反に関する案件を年間100件以上担当。依頼者の不安に寄り添い、法的なリスクから未来を守ることを信条としている。自動車専門誌での法律監修経験も多数。
「コツンと音がしたけど、傷は見当たらない…」今、どうしていいか分からず、強い不安を感じていますよね。大丈夫、落ち着いてください。
結論から言います。今すぐ、安全な場所に車を停めて、警察(110番)に電話してください。
この記事を読めば、年間100件以上の交通事案を扱う弁護士が、なぜ警察への連絡だけが唯一の正しい行動なのか、そして、その一本の電話があなたを「当て逃げ」の恐怖から完全に解放する理由を、どこよりも分かりやすく解説します。読み終える頃には、あなたの不安は確信に変わっているはずです。
「傷がないから大丈夫」が一番危ない。あなたの不安の正体とは?
「もしかして自分の気のせい?」「相手も気づいていないかもしれないし、事を荒立てたくない」そう思うお気持ちは、痛いほど分かります。実は、私が年間100件以上受けるご相談の中で最も多いのが、まさにこの「ぶつかったか分からない、傷もない」という状況なのです。
多くの方が、その場で警察に連絡することをためらってしまいます。その根底にあるのは、「もし勘違いだったら恥ずかしい」「大ごとになって時間を取られたくない」という心理です。しかし、法律の専門家として断言します。その一瞬の迷い、「傷がないから大丈夫だろう」という自己判断こそが、あなたを後日、より深刻なトラブルに巻き込む最大の原因なのです。
あなたの今の不安の正体は、「どうすべきか」という正しい知識がないことから来ています。大丈夫、この記事で、その不安を完全に解消していきましょう。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 接触したかどうか確信が持てない時ほど、警察に連絡するべきです。
なぜなら、この点は多くの運転初心者が見落としがちなポイントで、後日相手から「当て逃げされた」と申告されて初めて事の重大さに気づくケースが後を絶たないからです。警察への連絡は、あなたのアリバイを証明する最も確実な公的記録になります。この知見が、あなたの判断の助けになれば幸いです。
結論:傷の有無は関係ない。「警察への報告」が法律上の義務です
なぜ、あれほど警察への連絡を強く勧めるのか。それは感情論ではなく、明確な法的根拠があるからです。
日本の道路交通法第72条では、交通事故があった場合、その事故の大小や傷の有無にかかわらず、運転者は警察に報告する「義務」があると定められています。
ここで重要なのは、この「報告義務」を怠ることが、それ自体で法的な違反行為である「当て逃げ(報告義務違反)」に直結するという関係性です。つまり、あなたがその場から立ち去った場合、たとえ相手の車に傷がなかったとしても、「報告義務違反」という交通違反が成立してしまう可能性があるのです。
この関係性を理解することが、あなたの不安を解消する第一歩です。迷う必要はありません。法律が、あなたが進むべき道を明確に示してくれているのです。
もう迷わない!あなたを救う、今すぐできる2つのアクション
理屈は分かっても、パニック状態では体が動かないかもしれません。大丈夫です。今から、あなたを救うための具体的な行動を、2つのシンプルなステップに絞ってお伝えします。この通りに動いてください。
ステップ1:安全を確保する
まず、ハザードランプをつけてください。そして、後続車や周囲に十分注意しながら、駐車場内の他の車の邪魔にならない安全な場所に車を移動させ、エンジンを切ります。絶対に、焦ってその場から公道へ走り去ってはいけません。
ステップ2:警察(110番)に電話する
次に、深呼吸を一つして、スマートフォンで110番に電話します。伝えることは、以下の3つだけで十分です。
- いつ: 「たった今です」
- どこで: 「〇〇スーパーの立体駐車場2階です」
- 何があったか: 「車をバックさせていたら、コツンと音がして、隣の車にぶつかったかもしれません。自分の車と相手の車に傷は見当たりませんが、念のため連絡しました」
このように、ありのまま正直に話せば大丈夫です。警察官が、その後の動きを優しく指示してくれます。
そして、警察の現場確認が終わったら、その次に、ご自身の自動車保険の事故受付窓口へ連絡しましょう。警察への届出が完了していると、後の保険手続きがスムーズに進みます。この「警察が先、保険が後」という順序が重要です。
よくある質問(FAQ)
Q. もし自分の勘違いだったら、警察に迷惑がかかりませんか?
A. 全く問題ありません。むしろ、安全意識が高い素晴らしい行動です。警察官は、事故かどうかを確認するプロフェッショナルです。確認して何もなければ、それで安心して帰ることができます。遠慮する必要は一切ありません。
Q. 警察を呼ぶと、免許の点数が引かれたり、罰金があったりしますか?
A. いいえ、物損事故で相手のいない状況(もしくは相手がいてもお互いに過失がない場合など)で、安全運転義務違反などが問われなければ、基本的に点数が引かれたり罰金が科されたりすることはありません。警察への報告は、罰則を避けるための、あなたを守る行動です。
Q. 相手の車に連絡先を書いてワイパーに挟んでおけば大丈夫ですか?
A. それだけでは不十分です。相手への配慮としては良い行動ですが、警察への報告義務を果たしたことにはなりません。必ず、警察への連絡を最優先してください。
まとめ:あなたの未来を守る、たった一本の電話
この記事でお伝えしたかったことは、たった一つです。あなたのその不安は、正しい行動で今すぐ消せる、ということです。
「傷がないから」と自己判断して、数日後、数週間後に「当て逃げ」の容疑で警察から電話がかかってくるかもしれないと怯えながら過ごす未来と、今、少し勇気を出して電話一本かけることで、すべてを公的に処理して、明日から安心して過ごせる未来。
どちらを選ぶべきかは、もうお分かりのはずです。
さあ、スマートフォンを手に取って。あなたの未来を守るための行動を、今すぐ起こしましょう。
[参考文献リスト]

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